Naphthoquinone-derivative as a synthetic compound to overcome the antibiotic resistance of methicillin-resistant S. aureus

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Song R, Yu B, Friedrich D, Li J, Shen H, Krautscheid H, Huang SD, Kim MH.

Commun Biol. 2020 Sep 24;3(1):529.

doi: 10.1038/s42003-020-01261-0. PMID: 32973345; PMCID: PMC7518446.

Naphthoquinone-derivative as a synthetic compound to overcome the antibiotic resistance of methicillin-resistant S. aureus - Communications Biology
Ronghui Song et al. demonstrate that a lawsone (2-hydroxy-1,4-naphthoquinone)-based compound decreases the drug resistance of methicillin-resistant Staphylococc...

 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、軟部組織感染症から心内膜炎、中毒性ショック症候群、壊死性肺炎などの生命に関わる疾患まで、様々な疾患を引き起こすグラム陽性のヒト病原体である。これらの感染症の治療は、宿主の自然免疫系による攻撃を回避する多剤耐性菌の出現により、より困難になってきており、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant S. aureus: MRSA)の治療は重要な課題となっている。現在知られている抗生物質のほとんどは、直接細菌細胞内の複製、転写、翻訳、または細胞壁合成のプロセスを妨害する。しかしそれらの経路をターゲットとした抗生物質の攻撃を回避するため、細菌は、酵素による抗生物質の修飾、流出ポンプの亢進、薬のターゲットサイトの変異など、複数のメカニズムを進化させてきた。また従来の抗生物質に小さな化学基を修飾・付加することで抗菌性化合物を開発する戦略で、薬剤耐性の発生を無効化することに成功した例は限られていた。曝露された細菌が耐性表現型を発生させる確率を下げるために、異なる作用機序を持つ抗生物質の開発が急務である。

 ここでは抗生物質としての lawsone 誘導体の合成について報告する。lawsone (2-hydroxy-1,4-naphthoquinone) は、抗真菌活性、抗腫瘍活性、抗ウイルス活性などの生物学的活性を示す。抗生物質を合成するための pharmacophoric platform として lawsone を選択した理由は3つある。まず lawsone は、有機化学の簡単な合成ステップを介して様々な誘導体を生成するために、C3位置でのC-C結合の穏やかな形成を可能にする強力で汎用性の高い Michael-acceptor である。また、C3位置のH原子のR基での置換によって、lawsone のDNA塩基のN原子やタンパク質中のチオール基などの求核剤との非選択的結合を防ぐことができる。第二に、そのような誘導体化は、セミキノン、ハイドロキノンへの段階的な一電子還元を受ける能力を持つ本質的な quinonoid の構造的特徴を維持することができる。この活性は、抗菌活性をもたらす細胞内活性酸素種を生成するための NADH と分子酸素 (O2) の間の酸化還元サイクルを触媒することができる。第三に、α-ヒドロキシケトン部位の存在により、lawsone はユニークなキレートといえる。lawsone は、Fe3+イオンに選択的に結合することができる。鉄の恒常性は細菌の生存に必須なので、そのようなキレートによる鉄含有タンパク質や酵素からの鉄の奪取や細胞内遷移鉄の遮断は、細菌に有害である可能性がある。しかし我々の知る限り、このような lawsone のユニークな特性は新規抗菌化合物の開発として探索されていない。

 本研究では、親油性を系統的に調節することで一連の lawsone 誘導体を合成し、S. aureusに対する最小阻害濃度(minimum inhibitory concentration: MIC)を指標にスクリーニングし、強力な殺菌活性を示す候補化合物を同定した。候補化合物の治療効果を、マウスの創傷皮膚感染症モデルおよびMRSAによる非致死的な全身感染症モデルを用いて検証した結果、本化合物は多面的な作用機序(1: 細胞膜損傷、2: 細胞内鉄イオンのキレート化、3: 細胞内活性酸素の発生)で耐性菌の発生を抑制できることが明らかになった。このように、本研究の結果は、lawsone 誘導体のユニークな作用機序を、耐性菌の発生を抑制できる合成抗菌剤の開発に活用する機会を提供するものである。

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