Wang X, Cao Z, Zhang M, Meng L, Ming Z, Liu J.
Sci Adv. 2020 Jun 24;6(26):eabb1952.
doi: 10.1126/sciadv.abb1952. PMID: 32637620; PMCID: PMC7314526.
腸内細菌叢は人間の健康において重要な役割を果たしている。腸内細菌叢の障害があると、病原体の直接的な侵入または代謝を介した干渉によって、様々な疾患を引き起こされる。例えば腸内常在菌が欠乏すると、毒素によって腸管上皮バリアが損傷され、重篤な病原体感染症を引き起こされることがある。また、アルツハイマー病、糖尿病、一部の癌などの難病の多くは、腸内細菌の代謝と関連していることが証明されている。病原体の定着を阻害するなど有益な効果を持つプロバイオティクスサプリメントは、積極的に腸内細菌叢のバランスを整えるための効果的な戦略である。糞便細菌叢移植による予防と治療の成功例はあるが、組成が不確定なことや操作が侵襲的なことによって、患者の承諾が得られにくいだけでなく、消化管への刺激や潜在的な合併症のリスクがある。非侵襲的な方法として、腸内細菌叢のプロバイオティクスの経口投与は顕著な関心を集めている。残念なことに、経口摂取したプロバイオティクスの腸内での定着は限られている。これまでの研究では、胃での生存率を向上させるように抵抗性を向上した細菌が設計されていた。遺伝子工学に焦点を当てる代わりに、機能的なモチーフで細菌を表面修飾することは、効果的なアプローチである。我々は細菌の動態を調節するために、保護コーティングでプロバイオティクスをカプセル化している。しかしこれらの試みは、細菌を保護することにしか成功していない。消化管中のストレスに耐え、腸管通過を遅らせることができる方法は、腸内細菌叢の経口投与に大いに役立つであろうが、依然として非常に困難である。
自然界での極端な条件で生き残るため、細菌は物理的な脅威に対抗できるバイオフィルムを生成する。バイオフィルムは、コロニーを固体表面に付着させ、流体による除去を防ぐ接着剤として作用するだけでなく、抗生物質や宿主免疫系の侵入を防ぐことで外部からの脅威からも防御する。バイオフィルムの物理的接着と化学的バリア機能に触発され、我々は、腸内微生物を過剰なバイオフィルムでコーティングすることにより、消化管内での抵抗性と定着を著しく促進することができるかもしれないと推測した。本研究では、細菌をバイオフィルムで自己コーティングさせることで、経口投与した腸内細菌叢が腸管内に定着することを報告する。従来の一時的なコーティングによるカプセル化とは異なり、細菌が増殖している間に自己生産されたバイオフィルムをコーティングすることができ、長期的な保護と定着の効果を提供できる。豚での研究では、バイオフィルムで自己コーティングされたBacillus subtilisは、コーティングされていないものと比較して、125倍大きい oral bioavailability、17倍高い腸内での定着を示した。黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusの腸定着モデルにおいて、コーティングしたプロバイオティクスは長期的な脱定着効果を示した。コーティングによる長期にわたる保護特性と定着性より、我々はバイオフィルム自己コーティングした細菌の広範な消化管生物医学的用途への応用を期待している。
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