Peschek N, Herzog R, Singh PK, Sprenger M, Meyer F, Fröhlich KS, Schröger L, Bramkamp M, Drescher K, Papenfort K.
Nat Commun. 2020 Nov 27;11(1):6067.
doi: 10.1038/s41467-020-19890-8. PMID: 33247102.
細菌の細胞形態は非常に多様であり、種レベルで厳密に保存されている。特定の細胞形態は、最適化された栄養摂取、効率的な表面付着、原生生物からの回避などの生理機能に関連している。細胞の形状は、ペプチドグリカンに関係するフィラメントタンパク質によって影響をされる細胞壁の形状によって決定される。例えば、細胞骨格様フィラメントであるcrescentin(CreS)は、モデルバクテリアであるCaulobacter crescentusの細胞の曲率を制御する。Vibrio choleraeでは、細胞の湾曲を促進するために、ペリプラズムでCrvAタンパク質が重合する。crvA遺伝子を欠損したV. choleraeは動物感染モデルでのコロニー化が減衰し、また細胞の曲率は細胞密度に依存して増加していた。CrvAレベルは増殖中に連続的に調整されているようだが、その制御因子は現在のところ不明である。
最近、V. cholerae において small regulatory RNA(sRNA) による転写後制御が、病原性、バイオフィルム形成、二次メッセンジャー産生、ストレス耐性などの時空間的なプロセスを調節する鍵となることが明らかになってきた。sRNAの最大のクラスは、RNAシャペロンHfqと関連し、一般的に不完全な相補性の塩基対を介して標的mRNAの発現を制御する。1つのsRNAで制御されるネットワークには数十の標的が関与しており、sRNAはその制御範囲や生物学的重要性の点で転写因子に匹敵する可能性がある。例えば、sRNAは鉄、膜、糖のホメオスタシス、運動性、バイオフィルム形成、病原性などに重要な役割を果たしているが、細胞の形状を制御するsRNAはまだ報告されていない。
本研究では、桿状細菌V. coleraeをモデル系として、sRNAが細胞の曲率に与える影響を調べた。その結果、VadR sRNA の産生が、crvAB mRNA の発現を阻害することで、V. cholerae の細胞の曲率を効率的に低下させることを発見した。VadRの発現はVxrAB二成分系(別名WigKR)によって制御され、 ß-ラクタム系抗生物質によって活性化される。vadR を欠失した V. colerae 変異体はペニシリンに対する感受性が高く、この表現型は VadR 介在による crvAB の抑制と関係している。さらに、VadRは、RbmAマトリックスタンパク質をコードするmRNAを含む、バイオフィルムの構築に必要ないくつかの重要な遺伝子を制御している。このように、VadRはV. choleraeのバイオフィルム形成も抑制している。これらの結果は、細菌V. choleraeにおいて、どのようにノンコーディングRNAが細胞骨格様フィラメントを制御し、どのように細胞形態、バイオフィルム形成、抗生物質耐性を確立しているのか、明らかにした。
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