Pasolli E, De Filippis F, Mauriello IE, Cumbo F, Walsh AM, Leech J, Cotter PD, Segata N, Ercolini D.
Nat Commun. 2020 May 25;11(1):2610.
doi: 10.1038/s41467-020-16438-8. PMID: 32451391; PMCID: PMC7248083.
乳酸菌は、数十年の間、最も広範囲に研究されている微生物の一つである。乳酸菌は、様々な生物学的プロセスおよび生態系、特に発酵食品に関して、基盤的な役割を持つ。発酵の微生物学は一世紀以上にわたって広範囲に研究されており、特に原料を特定の特徴もった食品に変換する機能について、食品保存の戦略として何千年も前にさかのぼれる。工業的な発酵は、品質、再現性、安全性に考慮して、特定の代謝活性を保証するために、スターターや補助として選択された培養物に基づいている。一方、職人的なプロセスは通常、定義されたスターター培養物を伴わないし、原材料中または前の製造業者から供給される乳酸菌によって発酵が導かれる。食品関連の乳酸菌は発酵の性能および表現型の特性の観点から主に研究され、その知見は最近の乳酸菌株の膨大なゲノム配列決定のおかげで増加している。
食品の品質と安全性への貢献に加えて、特定の食品またはサプリメントとして機能性を追加するために、乳酸菌の潜在性はかなりの関心を集めている。機能性食品は基本的な栄養価上に付加的に利点を提供し、人間の健康に貢献するように設計されている。この点では、いくつかの乳酸菌の種および株はプロバイオティクス、すなわち、”宿主に健康の利点を与える生きている微生物 “として認識されている。
食品の乳酸菌の特徴に焦点を合わせる文献はすでに多くあるにもかかわらず、それらが人間の腸のマイクロバイオームといかに相互作用するか、まだ十分に理解されていない。摂取された乳酸菌は、最初に腸の物理的化学的障壁を乗り越え、何百もの細菌種と競争し、その後最終的に良い機能を発揮できる。このような一般的な見解にもかかわらず、食品マイクロバイオームが腸内マイクロバイオームにどの程度積極的に移行し、またこの複雑な環境でどのような役割を果たしているのか、まだわかっていない。発酵食品はいくつかの乳酸菌種や株を保持することができ、すべての人間集団で毎日消費され、潜在的に腸内マイクロバイオームと相互作用することができるプロバイオティクスの自然な供給源である。これにもかかわらず、乳酸菌種や株がプロバイオティクスとして腸に移ることができる程度はほとんど探索されていない。さらに、グローバルな視点で乳酸菌の分布を評価した研究はこれまでない。近年の膨大なハイスループットシーケンスデータを利用することによって、これらを実施できるかもしれない。
本研究では、腸内マイクロバイオームと食物マイクロバイオームの関連性を明らかにするために、一般に公開されている食品とヒトのメタゲノムの大規模なゲノムワイド解析を行い、乳酸菌種の存在率と多様性を調査した。ヒトサンプルからの9445のメタゲノムの分析によって、便中の乳酸菌種の存在率と量は一般に低く、これは年齢、生活様式、地理と関係しており、またその中で最も存在率が高いものはStreptococcus thermophilusおよびLactococcus lactisであることを私達は示した。さらに、発酵食品微生物から新たに再構成された666のメタゲノムアセンブルゲノム(MAG)、154,723のヒトMAG、193,078のリファレンスゲノムを参照して、食品微生物と腸内微生物のゲノムベースでの違いを明らかにした。我々の大規模なゲノムワイド解析は、密接に関連した乳酸菌株が食品と腸内環境の両方に存在することを示しており、発酵食品が腸内マイクロバイオームにとっての乳酸菌の供給源となりうることを示す前例のない証拠を提供している。
コメント