Sailani MR, Metwally AA, Zhou W, Rose SMS, Ahadi S, Contrepois K, Mishra T, Zhang MJ, Kidziński Ł, Chu TJ, Snyder MP.
Nat Commun. 2020 Oct 1;11(1):4933.
doi: 10.1038/s41467-020-18758-1. PMID: 33004787; PMCID: PMC7529769.
環境は人間の健康にとって重要な要素であり、特に季節の変化は人間の状態や病気と関連している。例えば、米国の冬の死亡率は夏よりも25%高いという顕著な季節性を示す。季節と関連した他のヒトの表現型としては、アレルギー、自己免疫疾患、心血管疾患、精神疾患がある。さらに、一連の大規模な集団ベースの研究では、収縮期血圧と拡張期血圧が夏よりも冬の方が高いことが明らかになっている。
光周期性は、季節に対する生物の反応の主要な手がかりの一つであると考えられている。これにより、動植物は一日の長さを測定して一年の時間を把握することができる。例えば、モデル植物(シロイヌナズナやイネ)を用いて、光周期や気温に応答した開花時期の研究が盛んに行われている。光日周の知覚の基礎となるメカニズムとして、内部の概日時計と外部の明暗サイクルとの相互作用によって日々計測がされている。
外部からの合図や病気はモニターされているが、ヒトの生物学的・生理学的プロセスが季節に応じてどのように変化するかほとんど知られていない。ヒトにおける季節変動の影響については、主に遺伝子発現データに焦点が当てられてきた。これらの研究は、被験者数、研究時間スパン、年間を通したサンプル収集などによって制限される。さらにそれらの研究では、季節変化が個人の症状に影響を与える可能性があるかどうか評価していない。加えてほとんどの研究では、四季の各季節の大きさが同じである前提で季節変化の研究を行うが、多くの地域での自然な生物学的パターンを反映していない可能性がある。任意の暦日に関係なくヒトの生物学的パターンを理解することは、疾患リスク予測、感受性、診断法を改善する上で重要である。
いくつかの研究では、糖尿病の発症やウイルス感染と解毒パターンを含む人間の複雑な生理的プロセスを解読するため、深い縦断的なプロファイリングに価値があることを示している。
本研究で我々は、(1)多様な個々の分子や経路の季節パターン、(2)生物学的変化の全体的パターン(すなわち、どれくらい多くの主要なパターンが存在し、いつそれらは任意の4つの季節から独立して発生するのか)、(3)インスリン感受性個体とインスリン抵抗性個体の間の年間を通じた分子および微生物の違い、を解明するために、マルチオミクスプロファイリングを活用して体系的な形で生体分子の特徴のカレンダーパターンを評価する。
105名について最大4年間にわたってディープサンプリングとオミックスプロファイリングを行うことで、マイクロバイオームと宿主の両方で1000以上の分子の季節変動を発見した。それら分子は、カリフォルニアの晩春と晩秋/初冬にピークを持つ2つの主要な季節パターンにグループ化される。この2つのパターンは、炎症、免疫、心血管系の健康だけでなく、神経学的、精神医学的状態など、ヒトの生物学的プロセスに関与する分子にエンリッチされている。最後に、インスリン感受性者とインスリン抵抗性者で異なる季節パターンを示す分子と微生物を同定する。本研究の結果は、ヘルスケアにおいて重要な意味を持ち、集団全体の健康リスクと管理を評価する際に季節性を考慮することの価値を強調している。
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