Gupta VK, Kim M, Bakshi U, Cunningham KY, Davis JM 3rd, Lazaridis KN, Nelson H, Chia N, Sung J.
Nat Commun. 2020 Sep 15;11(1):4635.
doi: 10.1038/s41467-020-18476-8. PMID: 32934239; PMCID: PMC7492273.
ヒト腸内マイクロバイオーム研究分野における最近の進歩は、がん、自己免疫疾患、メタボリックシンドロームを含む複雑な慢性疾患に関する重要な関連性と潜在的な機序を明らかにした。間違いなく、疾患の状況に焦点を当てた多くのマイクロバイオーム研究は、基礎となる病態生理学的メカニズムを解明し、潜在的な介入戦略を開発するために不可欠なものである。研究者が健康や病気に重要な役割を果たしている可能性のある腸内細菌を明らかにしていく中で、この知識を応用することによって、腸内マイクロバイオームのスナップショットに基づいて、自分の健康状態を示す指標を提供する分析的検査や定量的手法の開発につながるだろう。便サンプルの腸内マイクロバイオームの検査の開発は、健康状態を予測するための重要な役割を果たす可能性がある。継続的なモニタリングを通じて異常を検出することは、追加の検査やライフスタイルのへ介入のための手がかりとなる。
腸内マイクロバイオームサンプルから自分の健康状態を知ることは、現在のヒトマイクロバイオーム研究における重要な臨床目標である。腸内マイクロバイオームと人間の健康に関する新たな洞察は、ヒト被験者とその状況の広い範囲にわたって信頼性と堅牢性をもつことが要求されるので、集団レベルの分析は広く適用可能な原則と方法論の発見のための重要なプラットフォームとして機能する。大規模コホート研究のための相当量のマイクロバイオームサンプル(数百から数千のオーダー)の収集は、膨大なコストやインフラを必要とするので、十分な資金が提供された主要な研究センターやコンソーシアムで行われてきた。しかし最近では、幅広いデータ共有政策とその実践が求められるようになってきており、クラウドソーシングや既存の公開研究データを再利用して解析を行うことは、すでにマイクロバイオーム研究における仮説の立案や検証において重要な役割を果たし始めている。現在、世界中で行われている複数の独立した研究から、16S rRNA遺伝子アンプリコンやショットガンメタゲノムシークエンシングのデータが容易に入手できるようになっており、これらのデータセットをプールして統合することは、健康や疾患に関連するシグネチャーを大規模に研究するための有望な戦略であり、小規模な個別の研究では得られない新たな全体的な洞察を得ることができるだろう。
本研究では、Gut Microbiome Health Index: GMHIを紹介する。これは、便ショットガンメタゲノム(腸内マイクロバイオーム)サンプルの種レベルの分類学的プロファイルに基づいて、健康状態(すなわち、診断された病気の有無の程度)を評価するための堅牢な指数である。GMHIは、臨床診断とは無関係に、疾患に罹患している可能性を判定する。これは、複数の研究でプールされた一般に公開されている4347のヒト便メタゲノムの統合データセットから特定された、健康の良い状態と悪い状態に関連する2つの微生物種の相対的な存在量を比較することによって行われる。集団規模のメタデータセットの各サンプルにGMHIを適用することで、一般的に腸の健康やdysbiosisの指標として考えられている生態学的指標(Shannon diversity や richness)よりもはるかによく、健康なグループとそうでないグループを区別できることがわかった。健常者と非健常者の表現型の便メタゲノムの研究比較から、GMHIが健康の最も頑健で一貫性のある予測因子であることが示された。
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