Stephens WZ, Wiles TJ, Martinez ES, Jemielita M, Burns AR, Parthasarathy R, Bohannan BJ, Guillemin K.
mBio. 2015 Oct 27;6(6):e01163-15.
doi: 10.1128/mBio.01163-15. PMID: 26507229; PMCID: PMC4626852.
脊椎動物の腸内微生物叢は、宿主の健康と発達に重要な役割を持つ。これら微生物群集を支配するルールは、まだ理解され始めたばかりである。広義の観点から見ると、宿主関連微生物叢の形成には、確率的過程と決定論的過程の両方が関与している。決定論的な寄与には、宿主と微生物の相互作用、および種内および種間の微生物相互作用が含まれる。このような相互作用の原因となる細菌遺伝子は、transposon-mediated, signature-tagged mutagenesis (STM)スクリーニングと、トランスポゾン挿入部位に隣接するゲノム配列を解読するハイスループットシーケンシングにより、解明することができる。確率的要因は脊椎動物の腸内での定着において重要な役割を果たしているが、定着や競争に重要な細菌遺伝子の発見を目的とした遺伝学的スクリーニングの結果を解釈する際には、あまり注目されていない。
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)はモデル脊椎動物であり、脊椎動物の腸内微生物叢を理解するために使用され始めている。ゼブラフィッシュの高い繁殖力と子宮外胚性のために、細菌が定着していない多数のゼブラフィッシュ幼魚を、比較的に容易に飼育することができる。さらにゼブラフィッシュ幼魚の微生物叢は、容易に培養可能な Vibrio や Aeromonas などのガンマプロテオバクテリアによって支配されている。したがって、無菌ゼブラフィッシュへの1種または2種の細菌の定着などの実験的操作が容易である。ゼブラフィッシュ幼魚は透明であり、細菌の腸への定着をリアルタイムイメージングできることが、もう一つの強みである。Pseudomonas aeruginosa べん毛変異体を観察した研究は、ゼブラフィッシュ腸への定着のためにべん毛による運動が重要であることを示した。現時点では、これがマウスの消化管におけるVibrio cholerae や Salmonella enterica serovar Typhimuriumの定着に重要である走化性による運動にまで拡大できるかは不明である。
腸内細菌は、定着または病原性のための機能的能力だけでなく、利用可能なスペースや宿主の環境の確率的要因にからも制限を受ける。このことは、特に定着している集団のサイズが投入した突然変異体の集団サイズよりもはるかに小さい場合には、トランスポゾン挿入変異導入スクリーニングの解釈に影響を与える可能性がある。この問題を認識し、最近の大規模なスクリーニングでは、Hawaiian bobtail squid, Euprymna scolopes, に定着するのに必要なVibrio fischeri 遺伝子を同定した。他にも、トランスポゾンの挿入や、野生型の細菌株に挿入されている明瞭な配列タグを追跡することで、単一病原体感染時による集団の変化を具体的に取り上げている研究もある。最近では、Bacteroidesを定着させたマウスでは、同種の定着を阻害することが示されている。
ゼブラフィッシュ腸内で細菌の定着に必要な遺伝子は、これまでゲノムワイドなレベルでは解明されていなかった。本研究では、Aeromonas veronii Hm21とVibrio sp. ZWU0020の、単独状況、競合状況、また異なる順序で定着させた場合について、ハイスループットトランスポゾン変異導入スクリーニングを行なった。トランスポゾンタグ付きライブラリを用いて細菌集団の規模を追跡し、定着の過程で必要とされる遺伝子機能を同定した。我々は、すでに定着した細菌集団との、種間競争ではなく種内競争が、これらの2種の細菌の定着を大幅に低下させることを示した。
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