Dieltjens L, Appermans K, Lissens M, Lories B, Kim W, Van der Eycken EV, Foster KR, Steenackers HP.
Nat Commun. 2020 Jan 9;11(1):107.
doi: 10.1038/s41467-019-13660-x. PMID: 31919364; PMCID: PMC6952394.
細菌は固体表面で、exopolymeric substances (EPS) で囲んだ高密度のコミュニティ(バイオフィルム)を形成している。バイオフィルム内の細菌は、抗生物質、消毒剤、物理的除去、およびその他のストレスに最大1,000倍以上の耐性があり、この耐性は抗菌治療を大きく阻害する。したがって、バイオフィルム感染や汚染は広く発生し、医療、食品産業、農業を含む様々な分野で途方もない問題を引き起こしている。これに対して、バイオフィルムの形成を抑制し、微生物が治療の影響を受けやすい状態にする戦略が必要となる。これまでに、細菌の固着の防止、EPSの抑制や不安定化、クオラムセンシングへの干渉などが提案されている。確立されたバイオフィルムの除去が難しいことを考えると、バイオフィルムの形成を防止するために継続的に固体表面を処理することが特に重要である。
抗生物質のように、長期的な治療戦略は抵抗性進化を促すかもしれない。我々は、細菌の抵抗性進化を制限した形の抗バイオフィルム戦略を必要としている。抵抗性を制限するための一つの選択肢は、治療法を組み合わて複数の薬剤を使用することである。また、耐性を持つ変異体が生じることは受け入れるが、自然淘汰による作用を受けないようにするという考え方もある。このアイデアは、細菌の社会的形質を抑制することにかかっている。具体的には、生産するためにコストがかかるが、集団の他の細胞に利益をもたらす分泌物に焦点を当てる。例としては、細菌が固体表面と結合するためのポリマーを分解する酵素の分泌である。
バイオフィルムは多くの場合、抗菌薬に対する耐性が極めて高いが、共有されたEPSに依存していることは弱点でもあると考えられる。ここで我々は、SalmonellaのバイオフィルムのEPSは、その利益が細胞間で共有されている協力的な形質であり、EPSの阻害は細胞の付着と抗菌薬耐性の両方を低下させることを示している。次に、進化実験でEPS阻害剤を従来の抗菌薬と比較した。従来の抗菌薬に対する耐性は急速に進化するが、EPS阻害剤に対する耐性の進化は見られなかった。さらに、EPS阻害剤による治療では、耐性株が感受性株に打ち負かされることを示し、耐性が進化しない理由を説明した。この研究は、協力的な形質を標的とすることが、抗菌薬耐性の問題に対する実行可能な解決策であることを示唆している。
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