Cho CC, Chien CY, Chiu YC, Lin MH, Hsu CH.
Nat Commun. 2019 Apr 2;10(1):1491.
doi: 10.1038/s41467-019-09153-6. PMID: 30940816; PMCID: PMC6445106.
ポリ-ADP-リボシル化(Poly-ADP-ribosylation: PARylation)は、遺伝子発現、細胞シグナル、タンパク質活性と位置、細胞周期進行、DNA修復、アポトーシス、および壊死を含む様々な細胞プロセスに関与するユビキタスな翻訳後修飾である。PARポリマーの形成は、3つのDNA損傷誘導性poly (ADP-ribose) polymerase :PARPによって制御されるため、真核生物では、PARP化のDNA損傷との関係について研究されている。細胞では、PARPポリマーの生産は、主に豊富な核PARP1の活性によって制御されている。
様々な細胞エフェクターによって認識されうる他の翻訳後修飾と同様に、macrodomain、PAR-binding linear motif、PAR-binding zinc-finger、WWE domainsのような特定のドメイン構造を含むタンパク質は、PARポリマーと関連している。正常な細胞機能を維持するのに必要な、PAR結合タンパク質の一時的な再配置、一過性のサブオルガネラ構造の形成、核および細胞質でシグナル伝達を行うために、PAR処理酵素はPARylationの迅速なターンオーバーを実行する。
PARP1の豊富さにもかかわらず、DNA損傷によって生成されたPARのほとんどは、poly (ADP-ribose) glycohydrolase: PARGによって1分未満の半減期で、急速に分解される。いくつかの細菌種はPARP遺伝子とPARG遺伝子の両方を持っていることが判明しているが、細菌はpoly(ADP-ribose)代謝を欠いていると考えられてきた。
PARGは40年前に子牛胸腺抽出物から発見されて以来、最もよく研究されているPAR処理酵素である。PARGはドメイン構造の構成により、canonical型とbacterial型に分けることができる。脊椎動物とほとんどの真核生物は、触媒ドメインに続く複雑なN末端アクセサリードメインを含むcanonical PARGを持っている。canonical PARGsとは異なり、いくつかの細菌といくつかの真核生物(糸状菌、ワムシ、およびいくつかの原生動物種)で見つかったbacterial PARGは、非保存のN末端部位を持っている。PARG-like macrodomainは、canonical PARGとbacterial PARGの両方の触媒ドメインに埋め込まれていることが判明した。
Thermomonospora curvata 由来PARG(TcPARG)の結晶構造は、触媒ドメインがmacrodomainタンパク質ファミリーの遠いメンバーに属していることを明らかにした。TcPARGは、保存されたグルタミン酸による水分子を用いたオキソカルベニウム中間体の求核攻撃によって、ADP-リボースの放出する。TcPARG構造は、このbacterial PARGがPARポリマーの末端残基のみに結合することを可能にするリボースキャップと呼ばれる、そのC末端付近のループ構造に起因する立体的な制約を含んでいる。したがって、リボースキャップ構造はbacteria PARGをexo-glycohydrolaseの機能として制限する。canonical PARGはbacterial PARGと非常に類似したPAR加水分解メカニズムを共有しているが、リボースキャップ構造による立体障害を欠いているため、endo-glycohydrolase活性とexo-glycohydrolase活性の両方を持っている。しかし、保存されたフェニルアラニン残基 (Phe398 in Tetrahymena thermophila PARG; Phe902 in human PARG) は、canonical PARGを主にexo-glycohydrolaseとして機能させる。これまでに報告されているいくつかのcanonical PARGの構造と比較して,bacterial PARGの構造は1つしか決定されておらず,bacterial PARGファミリーの多様なメンバーの知識がまだ乏しいことを示唆している.
Deinococcus radioduransやその同属細菌は、電離放射線、紫外線、多くの薬剤によって引き起こされる重度のDNA損傷に対して顕著な耐性を示す。D. radioduransは、放射線損傷後の二本鎖DNA切断を修復する能力に優れている。数本の二本鎖DNA切断を修復する大腸菌と比較して、D. radioduransは、放射線照射後数時間以内に染色体あたり100本以上の二本鎖DNA切断を修復することができる。
D. radioduransのゲノムは完全に配列決定されており、ゲノムおよびプロテオームレベルでの放射線耐性のメカニズムの広範な研究が可能となっている。D. radioduransは、他の細菌が一般的に採用しているDNA修復機構のホモログであるUvrAとRecAをそれぞれ切除修復と相同組換えのために保有している。比較ゲノム解析の結果、大腸菌や枯草菌のように大きなゲノムを持つ他の細菌に比べて、D. radioduransはDNA修復経路に関与する遺伝子の数が少ないことが明らかになった。D. radioduransは、ゲノム中にPARGホモログを持つ多くの細菌種の一つである。また、トランスクリプトーム解析の結果、放射線損傷後にDrPARGの発現が増加したことから、DNA損傷応答に関与している可能性が示唆された。
DrPARGが媒介するADPリボース修飾のメカニズムを解明するために、ADPリボースの非存在下および存在下でのDrPARGの結晶構造を解析した。DrPARGはPARに対するendo-glycohydrolase活性を有している可能性が示唆された。私たちは、D. radioduransにおけるPARの存在を確認し、DrPARGの発現を阻害すると内因性のPARが蓄積され、紫外線損傷からの回復が阻害されることを示した。さらに、D. radioduransの内因性PARレベルは紫外線照射後に上昇することを明らかにし、PARが遺伝毒性ストレスに対する耐性に関与している可能性を示唆した。これらの知見は、bacterial PARGの構造的な知見を提供し、ストレス応答に関与する原核生物のPARylation機構の存在を示唆している。
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