Shaw DR, Ali M, Katuri KP, Gralnick JA, Reimann J, Mesman R, van Niftrik L, Jetten MSM, Saikaly PE.
Nat Commun. 2020 Apr 28;11(1):2058.
doi: 10.1038/s41467-020-16016-y. PMID: 32345973; PMCID: PMC7188810.
Anammox細菌の嫌気的アンモニウム酸化 (anaerobic ammonium oxidation: anammox) によるN2放出は、海洋から地球大気中に放出されるN2の50%におよぶ。また、排水中のNH4+を効率よく除去するために、anammox細菌の研究が盛んに行われている。当初anammox細菌は、電子供与体としてNH4+、電子受容体としてNO2−またはNOを利用すると想定されていた。10年以上前には、Kuenenia stuttgartiensisとScalinduaは、Fe(III)またはMn(IV)酸化物などの不溶性の細胞外電子受容体の還元とギ酸の酸化を組み合わせられることが示唆された。しかし、細胞外電子移動 (extracellular electron transfer: EET) 活性やこのカップリング反応の分子機構については、これまで未解明のままであった。さらにK. stuttgartiensis と Scalindua を用いたこれらの実験では、栄養獲得のための Fe(III)酸化物の還元と EET を介した呼吸の区別ができなかった。したがってこれらの研究からは、anammox細菌がEET能力を有するか否かを決定できない。
以前の研究は、K. stuttgartiensis はNH4+を電子供与体としてMn(IV)やFe(III)を還元できないことを示したが、anammox細菌が他のタイプの不溶性細胞外電子受容体へのEETと共役してNH4+を酸化する可能性を排除することはできない。実際に、EETはすべての不溶性細胞外電子受容体に一様には適用されていない。 いくつかの細菌は、電極などの炭素ベースの不溶性細胞外電子受容体に電子を転送することはできないが、金属酸化物の還元は行うことができる。
陸上や水生環境に普遍的に存在し、微生物の代謝に関与しない炭素系高分子量有機物(腐植物質など)を、化合物の嫌気的酸化の外部電子受容体として利用できることが20年以上前から知られている。また、100 種以上の EET 対応種を対象とした調査より、EET を行うことができる微生物には多くの生態系ニッチが存在することが示されている。例えば、病原体である発酵性グラム陽性菌Listeria monocytogenesはフラビンベースの EET プロセスを介して呼吸を行い、電気化学的に活性な微生物として振る舞う。さらに、anammox細菌は、EET に関与する Geobacter や Shewanella のmulti-heme cytochromeのホモログを持っていると考えられている。これらの観察結果から私たちは、anammox細菌がEET、NH4+酸化、炭素系の不溶性細胞外電子受容体を共役して、電気化学的に振る舞えるかどうかを検討した。
本研究では、NO2−の非存在下で、淡水および海洋のanammox細菌が嫌気的NH4+酸化と炭素系不溶性細胞外電子受容体(酸化グラフェンや微生物電池の電極など)への電子移動を結びつけていることを報告する。また15N標識実験により、anammox細菌がNH4+をNH2OHを中間体としてN2に酸化していることを明らかにした。比較トランスクリプトーム解析により、NH4+酸化により放出された電子が、Geobacter spp.やShewanella spp. などの金属還元微生物に存在するものと類似した経路を経て、細胞外電子受容体に移動することを明らかにした。 以上の結果から、EET依存性anammox細菌は固体電子受容体を末端電子シンクとして利用する可能性があり、嫌気的NH4+酸化には、NO2−、NO3−などが不要であることが明らかになった。これらの成果は、エネルギー効率の高い窒素処理のためのEET依存型anammoxプロセスの実現に向けて有望な知見である。
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